091.アルベルト・ムナーリ ― 2005年12月01日 20:38

先日ご紹介した「ブルーノ・ムナーリ協会(Associazione Bruno Munari)」はどうやらブルーノの子息、アルベルト氏が関わっているようですね。ちょっと調べてみたところ、アルベルト氏は1940年生まれ、心理学者でスイス・ジュネーブの大学教授だそうです。見つけたプロフィールのサイトがフランス語なのでよく分かりませんが、教育心理の専門家のようです。別のサイトではアルベルトとブルーノのムナーリ親子による対談もありましたので、内容をちゃんと読んだらご紹介したいと思います。
092.「ムナーリを知ろう」 ― 2005年12月02日 21:22

現在開催中の「ブルーノ・ムナーリ〜もっと豊かに もっと自由に」展のギャラリートークに行ってきました。20年前にこどもの城へムナーリ本人を呼んだ岩崎清さん(元こどもの城造形事業部・現日本ブルーノ・ムナーリ協会代表)による、少人数の参加者へざっくばらんな雰囲気でのトークで、今回は特にムナーリが作った本をテーマにいろいろなお話を聞くことが出来ました。オリジナルの絵本と復刻された本のどこが違うか、日本と海外の版権のことなどからムナーリの芸術活動と子供への教育活動の関係など、本の事以外にも面白いエピソードなどが飛び出しました。次回は12月9日(金)、まだ若干の余裕があるそうです。お問い合わせはこどもの城造形事業部03-3797-5662(直通)まで。 ちなみに「日本ブルーノ・ムナーリ協会」というのは、会員は岩崎さんひとりだけなのだそうです・・・。
093.国立ブルーノ・ムナーリ美術学校 ― 2005年12月03日 18:57

北イタリアにブルーノ・ムナーリの名を冠した美術学校があります。ヴェネチアの北50キロに位置するヴィットリオ・ヴェネトという町の「国立ブルーノ・ムナーリ美術学校」です。工芸から版画、染織、デザイン、ファッションなどのコースがあるようです。写真を見ると風光明媚な?環境ですね。学校のサイトからムナーリに関する資料もいくつか閲覧することが出来るようになっていました(イタリア語)。 https://liceoartisticomunari.edu.it/
094.ムナーリの言葉 ― 2005年12月04日 20:09

「沢山の視覚芸術に関わる人たち、画家、イラストレーターたちは機械をおそれている。機械のことは聞きたくも話したくもないくらいに。彼らは機械がいずれ芸術作品を生み出すようになり、そして人間の芸術家は失業すると信じているんだ。美術評論家も最近有名新聞の紙上でこんなことを書いていた:機械の芸術なんてあり得るか? この言葉が表しているのは、ただ問題の本質を無視しようとしているということにすぎないし、つまり絵筆(とかエンピツ)の芸術なんてあり得るか?と言っているのと変わらない。古き良き文化をコピーしながら現代を無視する状況をいまここで目の当たりにするのは悲しいことだ」 20世紀初頭に機械を積極的に肯定した、未来派に関わったムナーリらしい批評だと思います。 創造に新たな要素を恐れてはいけない、そういう気持ちの大切さでしょうか。 ("Molti artisti di arti visuali, pittori, disegnatori ecc., hanno il terrore delle macchine. Non ne vogliono nemmeno sentir parlare. Credono infatti che le macchine un bel giorno potranno fare delle opere d'arte, e si sentono già disoccupati. Anche un celebre critico qualche tempo fa a proposito di arte programmata ha scritto su un grosso quotidiano italiano questo grande interrogativo: avremo l'arte delle macchine? Frase che denota solo l'ignoranza del problema, poiché è come dire avremo l'arte del pennello - o della matita - effettivamente triste vedere una buona cultura classica accoppiata a una completa ignoranza della cultura moderna, di oggi, adesso, qui.")
095.レオ・レオニ ― 2005年12月05日 19:53

未来派についてちょっと調べものをしていたのですが、「スイミー」などで世界的に有名な絵本作家レオ・レオニ(Leo Lionni)は未来派の一員だったのですね。恥ずかしながら知りませんでしたが、子供の頃からレオ・レオニの絵本は大好きでした。とくに「フレデリック」が好きなのですが、いま我が家には小さな息子のために「あおくんときいろちゃん」が本棚に収まっています。レオ・レオニは1910年オランダ生まれ、ヨーロッパの大戦を避けアメリカに亡命してグラフィックデザイナーとして活躍し、戦後はアメリカとイタリアを往復していたそうです。1981年には来日も。ムナーリと相次ぐように1999年に没。ムナーリとの交流があったことと思われますので、もう少し調べてみたいと思います。
096.ムナーリの言葉 ― 2005年12月06日 09:42

昼と夜のように/ 規則と偶然は二つのコントラスト/ 光と暗闇のように/ 暖かさと寒さのように/ 陰と陽のように/ 男性と女性のように/ 規則は安心を与えてくれる/ 偶然は予想外で/ 規則的なら計画的であり/ 偶然はその時次第/ 雨のしずく/ 小石のかたち/ 親しげな気持ち/ 規則だけではモノトーン/ 偶然だけでは落ち着かない/ 規則と偶然のコンビネーション/ それが人生、それが芸術、想像力、バランス _Come il giorno e la notte/ la regola e il caso sono due contrari/ come la luce e il buio/ come il caldo e il freddo/ come i negativi e i positivi/ come il maschile e il femmnile./ La regola dà sicurezza/ il caso è l'imprevisto/ con la regola si può organizzare un piano/ il caso dipende dal momento/ le gocce della pioggia/ la forma di un sasso/ la simpatia./ La regola da sola è monotona / il caso da solo rende inquieti./ La combinazione tra regola e caso / è la vita è l'arte è la fantasia l'equilibrio.
097.「読めない本」を読むサイト ― 2005年12月07日 13:17

追記:2023年現在ウェブページは閲覧できませんでした…
098.ムナーリの照明器具 ― 2005年12月08日 11:19

1958年にムナーリがデザインした照明器具「cubica(キュービック)」です。ムナーリのデザインには照明器具に限らず立方体を基本としたフォルムがよく登場します。想像するに、ムナーリはデザイナーとしては特に合理的なアプローチを信条としていましたから、無駄のないシンプルなフォルムを追求していく過程で立方体が多く生まれたのではないでしょうか。分解組み立て・梱包までよく考えられていることが見て取れます。製品はダネーゼから発売され、現在も復刻品があるようです。
099.negativo positivo ― 2005年12月09日 22:36

ムナーリは「negativo positivo(陰と陽)」という作品(多くが平面:リトグラフでしょうか)を繰り返し制作しています。色と形の構成ですが、そこに見える「形」と「地」がどちらがどちらともとれる/見方によって主従が入れ替わることをねらったものだそうです。単なる連想かもしれませんが、イタリアの伝統的な都市空間について論じた本の中に、(ローマなどの)都市を上空から見たときの建築と空隙の関係が見方で入れ替わる、という説明があったことを思い出しました。
100.ウンベルト・エーコ、ムナーリを語る ― 2005年12月10日 18:22

「ミリ秒のうちのミリミクロン」ウンベルト・エーコ
ムナーリが長年没頭してきた沢山の楽しみは、それ以外のことを言うきっかけとしても価値がある。これらの記号論的な悩みの種は感覚、例えば二つの同じような意味を持つ言葉のわずかな入れ替えによって生まれ、特にそのひらめきのような短さに特徴がある。しかしボンピアーニ社で彼と数年間一緒に本を作ってきた経験から彼の電光石火の素早さについて語りたいのだが、あるとき誰かの提案にそって二つの図像を並べながらレイアウトの検討をしたとき、どうしても全体の調和がとれなくなった。そこへムナーリがやってきて、ほんのわずか、図像をミリ単位で配置を変えてくれたところ、完璧な調和、図像のハーモニーが生まれたではないか。彼はページを繰りながら、まるでバイオリンの調律でもしているかのように。すべて最小限のバリエーションが彼の細い指が動くたびに生まれてゆくのだ。私はそれを感心して眺めながら、私には決して学び得ないことだと思ったのだ。
MILLIMICRON IN MILLISECONDI Umberto Eco
Tra i mille divertimenti di cui Munari ci è stato prodigo in tanti anni, questi valgono come pretesto per dire altro. È che questi Disturbi semantici si basano su un minimo spostamento di senso, per esempio tra i significati di due termini sinonimi, e soprattutto sulla loro brevità fulminea. Ma vorrei dire della fulminea brevità di Munari grafico, con cui ho lavorato per anni a impaginare libri alla Bompiani, Qualcuno proponeva uno schema, poniamo, una colonna larga tanto e due immagini a fianco. Non funzionava mai. Era stonato. Munari interveniva in un secondo, riduceva i margini di un millimetro, spostava di un altro millimetro una delle due immagini, ne rifilava di poco la seconda, ed era armonia perfetta, musica. Lavorava sulla pagina come se accordasse un violino. Era tutta questione di variazioni minime, millicron in millisecondi, mentre muoveva le sue dita sottili. Lo guardavo incantato, e capivo che non avrei imparato mai.
Beppe Finessi, "SU MUNARI", Abitare Segesta Cataloghi, 1999
※2022年12月に訳の一部を改訂しました。
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