413.「ミラノの町を語ろう」2024年05月07日 11:38

ムナーリのお弟子さんであるデツァーニさんが紹介してくれた、ボルトーニさんという方は、アメリカの子どもミュージアムでキャリアを積んで現在はミラノで子どものための文化活動の団体をたちあげられています。
innovActionCult
2024年5月7日、ボルトーニさんのSNSで「Racconti Straordinari di Citta':町の特別を語ろう」というイベント?の発表がありました。ミラノ市内の学校などに町を知る/探検するきっかけとなるデザイン冊子が配布されるそうです。
その中にはミラノ生まれの芸術家/デザイナーとして、ムナーリのことも紹介されているようです…
サイトは現時点でイタリア語オンリーのようで、リリース直後のせいか内容確認にちょっと時間がかかりますが、子どもたちに自分の暮らす町や地域について興味をもってもらう取り組みは、日本の地域教育ともつながるように思います。
Racconti Straordinari di Citta'

408.レステッリさんの新刊イベント@ミラノ2024年04月02日 10:52

出版イベント
2024年2月にミラノでお会いしたムナーリのお弟子さん、レステッリさんが昨年上梓された、ムナーリのメソッドによるワークショップの本の最新刊「ヒモで遊ぼう(GIOCARE CON FILI)」の出版イベントが4月4日におこなわれるそうです。
著者レステッリさんと、ミラノ・ビコッカ大学のズッコリ教授によるトークがあるとのこと。
パルマのムナーリ展ともども行きたいのはやまやまですが…(泣)

405.ミラノの幼保小一貫校とムナーリの教育2024年03月16日 22:21

ミーレ・バイリンガル・スクール
2024年2月のイタリアでの調査の際に、ムナーリのお弟子さんだったデツァーニさんが指導されているミラノ市内の「ミーレ・バイリンガル・スクール」を訪問しました。

Mile Bilingual school

ミラノ市南部の閑静な住宅街にある私立学校で、こちらもすでに紹介したパルマの「ムナーリ・スクール」のように保育園、幼稚園、小学校が揃った私立の一貫校です。
ただしこちらのスクールはそもそも企業オーナーが従業員の子弟のために開設されたもので、国際企業で国外から転勤してくる家族のことを考えてバイリンガルスクールになっているとのこと。
デツァーニさんはこの学校が設立された20年前にこの学校における造形活動のアドバイスを求められ、最終的にご本人が指導することになって20年が過ぎた、と言われていました。
小学校、幼稚園、保育園は隣接している別の建物にあって、それぞれにワークショップルームが用意されており、子どもの発達に会わせた形でムナーリの教育のエッセンスが活かされた造形活動を行っているとのことでした。
イタリアの公教育では、近年0歳から6歳の統合保育(日本の「こども園」の構想以上に、子どもの成長を連続的にサポートする意図が強調されています)が進められていますが、さらに幼保小の連携について、ミラノやパルマの私立校がこのような試みを展開していること、その中にムナーリの教育思想が取り入れられていることが分かり、発見の多い調査となりました…。

403.ブルーノ・ムナーリ・スクール(パルマ)2024年03月12日 19:52

ブルーノ・ムナーリ・スクール(パルマ)
ムナーリのお弟子さんだったレステッリさんのご紹介で、2024年2月にパルマという町の「ブルーノ・ムナーリ・スクール」を訪問しました。

Asilo e scuola materna Bruno Munari Parma

イタリアでは著名な芸術家であり教育者でもあったムナーリの名前は、実はイタリア各地の学校に付けられているようです。レッジョ・エミリアにも「自治体立ブルーノ・ムナーリ幼児学校」があります。
しかし今回訪れたパルマの学校は、現校長カソーリさんのお母様がムナーリと親交があったことから、おそらく世界で唯一、生前のムナーリ自身からその名を付けることについて許可を受けた、というものだそうです。
この学校は0〜3歳の保育園と3〜6歳の幼稚園、6〜12歳の小学校が同じ建物の中でつながっている、日本の付属校のような教育施設で、もちろん国や自治体の学校設置基準は満たしながら「教育の独自性を守るために」完全私立(補助金をほとんどもらっていない)なのだそうです。
「ブルーノ・ムナーリ・スクール」ではムナーリの教育メソッドとモンテッソーリのメソッドそれぞれについて公式に認められた研修をもとに、それらをハイブリッドにしたバイリンガル教育をおこなっているとのことです。
イタリアの幼児教育や初等教育のユニークな事例を知ることができました。

401.ムナーリの教育玩具と教育学者の視点2024年03月04日 08:30

ムナーリの教育玩具
2024年2月にミラノの「スパツィオ・ムナーリ」で閲覧したダネーゼ社の教育玩具に関する講演会資料の中から、教育学者マントヴァーニのスピーチを解読してみました。
マントヴァーニ先生には2023年12月に直接会う機会を得たのですが、ご高齢になっても教育現場と保育者養成の最前線で活躍されています。
テキストのスピーチは今からおよそ半世紀前のこととなりますが、以下に紹介するスピーチの結びの部分からも、教育現場に身を置く専門家としての貴重な指摘を読み取ることが出来ます。

Chiaramente un materiale bello come questo implica dei costi elevati, ma proprio il carattere della riunione di oggi mi fa credere che essi siano pensati soprattutto per le scuole più che per i singoli, per una utilizzazione di gruppo. Sono giochi-idee che possono dare, a scuola, lo spunto per altre idee, per la creazione di altri materiali.
I genitori per i quali giochi come Più e Meno siano significativi sono certo poco rappresentativi, numericamente. Mi pare molto più interessante pensare ad un'utilizzazione di gruppo, nella scuola.
このような美しい教材は明らかに高いコストを必要とするでしょう。しかし今日のイベント(講演会)の性質から見て、これらの教材は個人向けというよりは学校向けであり、集団で使用するためのものだ、と私は考えています。これらは学校にとっての他のアイデアや教材作りのヒントになるアイデアの玩具になるでしょう。
「プラス・マイナス」のような玩具が重要な意味を持つと考える保護者は、数字的に見て明らかに代表的ではないでしょうから。それよりも、(これらの玩具の)学校での集団利用を考える方がはるかに興味深いことでしょう。
Vi è anche un rischio, però, nella cosa troppo bella, troppo astratta. E' necessario che vi siano persone che producano materiali per la scuola ad un certo livello qualitativo, anche estetico, ma essi devono avere un continuo feed-back dalla scuola perché possono anche sbagliare, creare strumenti troppo rarefatti che non troverebbero una collocazione possibile nella situazione scolastica reale. Non si tratta solo di un coinvolgimento, bensì di una esplicita richiesta alla scuola, da parte di tecnici, intellettuali, da parte dell'Università per rendersi conto di quali siano i bisogni reali e quindi avviare ricerche e proposte che a questi rispondano. Ciò non è del tutto nuovo nella scuola dell'infanzia; abbiamo avuto esperienze di base molto avanzate e da queste è venuto lo stimolo per la ricerca, per la produzione di materiali adeguati e nuovi per situazioni e problemi concreti. Mi pare importante che vi sia un sempre maggiore coinvolgimento ed impegno delle istituzioni culturali nei confronti della scuola, ma questo impegno deve essere provocato e controllato soprattutto dalla scuola stessa. Nessuno di noi vuol più vedere il « ricercatore » che va nella scuola, conduce il suo esperimento e scompare, magari scrivendo poi un bel libro che nessuna insegnante leggerà. Ciò vale anche per questi materiali: c'è chi li fa ed è già molto; si deve ora trovare il modo per provarli, vedere se e come funzionano, se vanno adattati, quali altri andranno creati; avviare, insomma, un processo vero di scambio con la scuola.
しかし、そこにはリスクもあって、それは教材が美しすぎたり、抽象的すぎることでしょう。学校向けの教材を美的にも一定水準の品質で作る人がいなければならないでしょうし、 また彼らは学校から継続的にフィードバックを受ける必要があります。なぜなら彼らもまた間違えたり、実際の学校の現場で用いることができない希薄すぎるツールを作ってしまうこともあるからです。それは単なる関与ではなく、技術者や知識人、大学の側からの学校への明確な要請であり、真のニーズが何であるかを認識し、それに応える研究と提案を開始することです。これは幼児学校においてまったく新しいことというわけではありません;私たちは非常に高度な基礎的経験を積んでおり、そこから研究への刺激や具体的な状況や問題に対する適切で新しい教材を生み出す刺激を受けてきました。私は文化機関が学校への関与を強め、コミットメントしていくことは重要だと思いますが、このコミットメントは何よりも学校自身が誘発しコントロールしなければならないものです。私たちはもう誰も「研究者」が学校に行って実験を行ってはすぐに姿を消し、おそらくその後で誰も読まないような素敵な本を書くことなど見たくありません。これらの教材について何が役立つのか: そういったものを作る人はすでにたくさんいます;それを試す方法を見つけなければなりません。それがうまくいくかどうか、どのように機能するか、適応させる必要があるかどうか、他にどのようなものを作る必要があるか、要するに、学校との真の交流のプロセスを始めるのです。

ATTI DEL CONVEGNO
PROGETTO SCUOLA
PROMOSSO DALLA DANESE GIOCHI DIDATTICI
DANESE MILANO 15 APRILE 14 MAGGIO 1977

400.ベバ・レステッリさんの新刊『ひもであそぼう』2024年02月29日 22:40

1980年代からムナーリの指導のもと子どものためのワークショップをおこなってきたベバ・レステッリさんにミラノでお会いしてきました。
これまでベバさんの著書をいくつか手に入れ、特に数年前からは彼女の最初の著書だという『触覚であそぼう(GIOCARE CON TATTO)』を読み込むことでムナーリの教育の研究をまとめてきたので、初めて直接お会いするのに初めてではないような不思議な感じでしたが、日本からやってきた見知らぬ日本人を温かく迎えてくださいました。
ちょうどミラノに着いた翌日、市内の書店でベバさんの本を発見したのですが、これが昨年出版されたばかりの新刊でした。
『ひもであそぼう(GIOCARE CON I FILI)』というタイトルで、糸やヒモの特性を活かしてどんな表現が生み出せるか、という子どもの発想を広げてくれる色々な事例が紹介されているようです。
ベバさんによるとこれまでに7冊ほど、ムナーリの教育とワークショップに関する本を書かれた由、いずれ日本でも読めるようになる日が来ることを願っています。

399.ムナーリの教育玩具資料(1977)2024年02月26日 17:46

2024年2月のイタリア調査で、2023年アキにミラノにオープンした「スパツィオ・ムナーリ」を訪問することができました。
いずれ別のトピックとしても紹介したいと思っていますが、ギャラリーショップのような空間の一角には世界各国でこれまで開かれたムナーリの展覧会カタログなどが閲覧できるようになっています。 (その中には日本での展覧会資料もしっかり備えられていました)
個人的に、大きな収穫だったのはムナーリがダネーゼ社のためにデザインした教育玩具シリーズに関する講演会資料があったことです。
1977年といえばムナーリがミラノのブレラ美術館ではじめて子どものための大きなワークショップを実現した年でもあり、この時期からムナーリがどれほど真剣に子どもの創造性教育に関わろうとしていたかを伺うことができます。
ムナーリ自身はこの講演会でスピーチしていませんが、教育学者でコラボレーターだったベルグラーノ、息子で認識論学者のアルベルト氏の他にも現在も現役でミラノ・ビコッカ大学と附属幼稚園での指導にあたっているスザンナ・マントヴァーニ教授などがムナーリのデザインした教育玩具と子どものアクティビティについて論じているようです。
これから、写し取ってきた内容をじっくりと分析していこうと思っています。

397.ベバ・レステッリさん2024年02月24日 19:30

ベバ・レステッリさん
1980年代からムナーリの教育ワークショップの協力者として活動し、ムナーリの教育に関する多くの著書を書かれているベバ・レステッリさんに、ミラノで会うことができました。
本ブログを始めた頃、青山こどもの城でムナーリ展が開催され、その際に来日されたレステッリさんの講演を聴いた記録が残っているのですが当時はムナーリの教育活動について知識がなさ過ぎて内容の理解に至りませんでした。
その後デザインから教育の世界に身を移して、教育者としてのムナーリを中心に調べるようになり、レステッリさんの著作からは多くの学びを得ています。
今回(2024年2月)のイタリア行きでは、直接レステッリさんご本人に会って意見を交わすことができ、またレステッリさん以外にもムナーリと深い縁のある方々と交流することができました。

392.ミラノの保育施設とムナーリの猫2023年12月11日 06:08

先日、イタリアの教育施設の研究調査のために数年ぶりにイタリアを訪れました。
友人知人に挨拶をする間もない駆け足の日程でしたが、そのかわり新たな出会いがありました。
その中でもミラノ郊外のビコッカ大学附属保育園と幼稚園の見学は大変興味深いものだったのですが、教育の仕組みだけでなく空間や備品のデザインまでよく考えられた施設の壁に、ムナーリがデザインした「猫のメオ・ロメオ」のポスターを見つけました。
ビコッカ地区は大企業ピレリ(ピレッリ)の本拠地のようなのですが、考えてみれば「猫のメオ・ロメオ」は当時最先端の発泡ゴム成形技術を用いてつくられたおもちゃでした。
保育施設を統括されているビコッカ大学名誉教授のマントヴァーニ先生は、ムナーリと交流があったとお話を伺いました。
イタリアでは教育の世界でもムナーリの仕事が受け継がれていることを実感する出来事でした。

390.ムナーリの教育センター構想2023年11月05日 11:30

ムナーリの教育活動が社会全体の創造性の向上を願ったもので、彼の晩年の大きな継続的テーマであったことは、これまで調べてきたことからかなり明らかになってきました。
これを裏付ける資料が、数年前に入手していた『長期的なプロジェクト(Un progetto a lungo termine』という研究書の最後に示されていました。
Miriam Nocchi Croccolo, 2005, "Un progetto a lungo termine : I laboratori di Bruno Munari Nel mondo da Brera 1977 a S.Paolo in Brasile 1995" p.102

Munari ha tentato varie volte di far nascere a Milano un centro per la creatività infantile; centro che avrebbe dovuto sorgere nell'area dello "ex zoo", spazio questo con il vantaggio di essere vicino al Planetario e al Museo di Storia Naturale.
Almeno quattro assessori di giunte diverse se ne sono occupati e ne hanno parlato, ma tutto è rimasto sulla carta.
Ne sono testimonianza le lettere al "Gentile Assessore" riportate dalla rivista «Leggere», diretta da Rosellina Archinto (meritevole ed infaticabile direttrice dell'ormai mitica collana di libri per bambini Emme Edizioni), in occasione degli 89 anni compiuti da Munari nell'ottobre del '96.
ムナーリは何度もミラノに子どもたちの創造性のための施設(センター)を設立しようと試みた; この施設は、かつての動物園の跡地に建設される予定で、プラネタリウムや自然史博物館に隣接するという利点があった。(訳註:この記述から、構想された施設はミラノ中心部の公園Giardino Indro Montanelli内を想定していたと考えられる)
少なくとも4人の異なる議会の議員たちがこの問題を扱い議論したが、すべては書類上の検討にとどまっている。
(伝説的な子どものための本シリーズに関わったエンメ・エディツィオーニ出版社の功労者であり不屈の編集者)ロセッリーナ・アルキントが編集長を務めていた雑誌『レッジェレ』が、1996年10月のムナーリ89歳の誕生日に報じた「親愛なる評議員へ」の手紙がそれを物語っている。
«Gentile Assessore, propongo alla sua attenzione quanto era già stato proposto all'Assessorato all'Ecologia in merito all'ipotesi che prevede nell'area dell'ex zoo una stazione di sperimentazione e documentazione dei laboratori di stimolazione della creatività infantile. Molti di questi già funzionano col mio metodo in diverse nazioni: Francia, Giappone, Stati Uniti, Israele, Spagna, Venezuela, Brasile e in Italia nei musei di Faenza e Prato».

La grande richiesta di questi laboratori, non ultimo quello collegato alla mostra LEGO alla rotonda della Besana promossa dal Comune di Milano, fa pensare quanto sarebbe utile per Milano, che ha visto nascere i laboratori a Brera nel 1977, dotarsi di un centro internazionale di informazione, sperimentazione e verifica continua del metodo. Il centro di informazione lavorerà a stretto contatto con le scuole milanesi che a rotazione, parteciperanno (insegnanti e bambini) alla sperimentazione.
Non dimentichiamo che il bambino di oggi è il cittadino di domani e che un bambino creativo è un bambino felice...
「親愛なる評議員の皆様、私(ムナーリ)は、これまでに(ミラノの)旧動物園跡地に子どもたちの創造性を刺激するためのワークショップの実験と記録のための施設を設置する計画を環境局に提案していることを、皆様にお伝えいたします。このワークショップの多くは、すでにフランス、日本、アメリカ、イスラエル、スペイン、ベネズエラ、ブラジル、そしてイタリア国内のファエンツァとプラートの美術館など、さまざまな国で私のメソッドによって実施されました。」

ミラノ市議会が推進したロトンダ・デッラ・ベザーナ(訳註:ミラノ市内中心部の旧修道院で、2014年以来MUBA:ミラノ・チルドレンズ・ミュージアムの拠点)でのレゴ(ブロックの)展覧会に関連したワークショップはもとより、これらのワークショップに対する大きなニーズは、1977年にブレラでワークショップを開催したミラノにとって、情報提供、実験、手法の継続的検証のための国際的なセンターがあれば非常に有益なものであると考えられる。この情報センターはミラノの学校群と密接に連携し、学校(の教師と子どもたちが)は交代で実験に参加するだろう。
私たちは、今日の子どもは明日の市民であり、創造的な子どもは幸せな子どもであるということを忘れてはならないのだ。

ムナーリは、1985年の来日の際ワークショップを行った東京の「子どもの城」の施設からも触発されていたことが想像できます。残念なことに「子どもの城」はいまはなく、しかしミラノには2014年以来、ムナーリのワークショップとも関連をもった子どものための文化活動を展開する「MUBA」(ミラノ・チルドレンズ・ミュージアム)が生まれました。
<< 2024/05 >>
01 02 03 04
05 06 07 08 09 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

このブログについて

イタリアの芸術家+デザイナー+教育者、ブルーノ・ムナーリのことなどあれこれ。
こちらにもいろいろ紹介しています(重複有)https://fdl-italform.webnode.jp/

RSS