298.「触覚であそぼう」序章2019年11月27日 20:35

Giocare con tatto, 2002
ムナーリのお弟子さんだったベバ・レステッリさんが2002年出版した「触覚であそぼう」(Giocare con tatto)を入手しました。 序章の部分を日本語で紹介してみます。 /0.1 ブルーノ・ムナーリとの出会い、新しい世界の発見 /La prima volta che ho visto Munari in azione e' stato a un corso suIla stimolazione della creativita infantile a Milano nel 1978. /私が初めて直接にムナーリと出会ったのは、1978年ミラノでの子どもの創造性を刺激する講習でした。 /Per me, un colpo di fulmine, anzi un colpo nel senso letterale del termine: /それは私にとって雷に打たれるような、あえて言うならば概念の衝撃でした。 /in un attimo sono crollati tutti i miei mattoncini ben impilati, la costruzione troppo rigida e schematica delle mie idee. /瞬間に、私のがっちりと積み上げられ凝り固まっていた考え方は完全に打ち崩されたのです。 /Tuttavia il "crollo" e’ stato attutito da un pensiero, per me assai prezioso, di Alberto Munari che suo papa soleva citare: la conoscenza non e’ una struttura verticale, come un grattacielo, ma e’ formata da un reticolo di relazioni continuamente modificabili. /アルベルト・ムナーリが父の言葉として語った、知識は高層ビルのように垂直構造なものではなく関係性の連結であり組み替えられるものだという考え方、それは私のもやもやを崩す、とても貴重な教えでした。 /L'insegnamento di Munari nella mia vita e’ stato un vero e proprio ribaltamento: dalle troppe parole, dalle teorie, alla sperimentazione, al "fare insieme per capire". (Un altro maestro, Paul Klee, aveva detto: "Ci si aggrappa alle teorie perche’ si teme la vita e si ha paura dell'incertezza"). /沢山の言葉と定理、実験(もう一人の師、パウル・クレーは「(人は)人生に不安を感じ、不確実さを恐れるゆえに定理にすがる」と言いました)より「一緒にやってみながら理解する」ムナーリの教えは、私の人生にとってまぎれもない大転換でした:。 /
Munari aveva il dono di insegnare molto dicendo solo poche parole, le piu’ illuminanti e insieme le piu’ imprevedibili. /ムナーリはわずかな、予測できないひらめきに満ちた言葉で、教えを与えてくれました。
La storia del laboratorio che ho fondato a Milano nel I980 inizia dall'incontro-scoperta di Bruno Munari e del suo "fare concreto". /1980年ミラノで立ち上げられたワークショップの歴史はムナーリと彼の「具体的に作る」の出会いから始まりました。
 /Le sue azioni, per incuriosire i bambini per vedere come si fa senza tante spiegazioni, mi hanno fatto ritrovare il gusto di imparare giocando. /彼の動きは、子どもたちに興味をかき立て多くの説明をすることなく何をするかやってみせるもので、私に遊びながら学ぶ楽しさを再発見させました。 /Il suo profondo interesse per la natura e l'acuto senso di osservazione mi hanno aiutato a vedere meglio: le sfumature dei colori, le textures dei materiali, i segni nei sassi, le innumerevoli quantita’ esistenti di muschi... /彼の自然に対する深い興味と鋭い観察眼は私のものの見方をよりよいものにしてくれました: 色のグラデーション、もののテクスチャー、小石の模様、多様な苔の存在など… /Il rigore unito alla costante ricerca dell'essenzialita’ mi ha indicato la via: il suo modo di essere ha favorito la mia comprensione dello Zen. /たしかで不可欠な研究の厳格な結びつきは私に道を指し示しました: 彼の存在は私の禅の理解を助けてくれました。 /Incontrare Munari per me e’ stato incontrare un Maestro - anche se a lui non piaceva essere chiamato cosi’ - a cui sono debitrice di un insegnamento rivoluzionario. Grazie Munari. /私は彼の革新的な教えの弟子として、私にとってムナーリとの出会いは師との出会いでした〜彼はそう呼ばれることを好みませんでしたが〜。ありがとう、ムナーリ。

294.マントヴァでのワークショップ(i laboratori tattili-23)2019年04月30日 17:37

1984年10月から11月に、(マントヴァの)マウリツィオ・コッライーニ(Maurizio Corraini)現代美術ギャラリーでのワークショップ。ギャラリーの一室の中央で、子どもたちは金属製のベッドのような「アビタコロ」(ムナーリがデザインした金属製のユニット家具)と出会った。  沢山のボルトで組み立てられたアビタコロの上には、フレームが隠れるほど一杯の山のような素材であふれている。子どもたちはそこによじ登り、入り込み、飛び上がり、また繰り返し出入りしながら、そこにあるすべてのものに触れてみることができる。  アシスタントの大人が子どもたちに触感を表現する言葉を投げかける:柔らかい、フワフワする、ぐにゃぐにゃする、ザラザラする、などなど。こうして子どもたちは自分の感じている触感を言語化して覚えていく。  そして最後に、(大人たちにとって)唯一なにより大変なのは、子どもたちをこの刺激的な代物から引き離して、家に連れ帰ることだったろう。

293.トリエステでのワークショップ(i laboratori tattili-22)2019年04月21日 22:04

 1984年10月、ナディア・バッサネーゼ(Nadia Bassanese)のスタジオで開催されたムナーリ展に合わせてワークショップが行われた。展覧会開催中の毎日、スタジオではワークショップが開かれた。スタジオの一室には部屋の中央に四角く囲われたエリアを設け、山のように切り刻まれたさまざまな触り心地の素材が用意された。子どもたちはその周りに置かれた布のソファに座り、靴を脱いで講師(ムナーリやその他のスタッフが各回のワークショップに関わった)が話しかける内容:まず、顔やシャツや靴などいろいろなものをを触ってみよう、という話を聞いた。そして、子どもたちは素材のエリアに入っていろいろなものに触れ、素材の違いを見つけたり、コントラストのある組みわせやわずかな感触の違いの組み合わせえを感じながらそれぞれのオブジェを作ってスタジオの壁に飾っていった。  (p52写真説明)トリエステでのワークショップは、(フリウリ)州の教育研究センターと、マリアグラツィア・チェッリ(Mariagrazia Celli)、マリネッラ・ラヴァリコ(Marinella Ravalico)、マリーザ・ロッセッティ(Marisa Rossetti)らによって準備された。  ワークショップには幼稚園の教師や展覧会に付き添ってきた保護者も参加した。  (p53写真説明)子どもたちが彼らの感じた触感を伝える、異なる素材の組み合わせや直線的構成、ブックレット型などの力作の例。

292.触覚の構築物(i laboratori tattili-21)2019年04月16日 08:37

 細長いパネルや、帯状の厚紙、紐やリボンなどにリネアな触覚の構成(作品)を作るやり方以外にも、いろいろな素材、いろいろな触覚を組み合わせてオブジェを作ることもできる。 (作品写真)これらのオブジェは(平面的構成とは)また違った遊び方ができる。外側から、内側から、右側から、左側から、片手で、両手で、さまざまに触れることができる。  触っていく順序(ルート)を決めても良いだろう。それぞれのルートから触覚の刺激により異なる物語が生まれるし、そこに具体的なイメージを与えても良い: ネコみたいな柔らかさ、街路みたいな固さ、壁のような粗い感触、鉢のようなへこみ、瓦のようなでっぱり。今度はどんな物語が生まれるだろう?

291.その他のワークショップ(i laboratori tattili-20)2019年04月12日 23:50

(p43写真説明) 学校で行われた触覚のワークショップ。壁には触り心地を比べるパネルが、テーブルには触ったり組み合わせたり混ぜ合わせたりできるたくさんの素材が用意されている。 (p43写真説明) 素材に触りながら、その感触を覚えていく。 (p44写真説明) 自分の髪に触ってごらんなさい、セーターに触ってごらんなさい、ほっぺたに触ってごらんなさい、メッタ・ジスロン(Metta Gislon)が子どもたちに語りかける。お母さんのほっぺたはどんな感じ?やわらい!お父さんのほっぺたはどんな感じ?ザラザラしてる! 学校にある素材を使っていろいろな方法で構造物を作り、いろいろな布素材でこの木製の骨組みを覆ってみよう。 床に広がったおがくずや発泡スチロール(梱包材)。子どもたちは全身を使って触覚の感覚を味わう。 屋外に出れば、より多くの触覚の体験を与えることができる: 草、土、葉っぱ、枝、芽、石… そしてワークショップに戻って、紙を切ったり折り曲げたり濡らしたりしながら、(屋外で感じた)感触を再構成することができる。 そして、ふたたび屋外で遊ぶための何かがそこで生み出される。

290.その他のワークショップ(i laboratori tattili-19)2019年04月09日 20:54

 最初のワークショップから得られた経験をもとに、表現作品を実現するためのテクニック、ワークショップの(時間的な)進め方、有効な素材の取捨選択などのメソッドが明らかになった。 複数の小学校からワークショップに関する問い合わせが届き、1980年から81年には(最初のワークショップ指導に関わった協力者の一人である〜写真説明より)メッタ・ジスロンによるワークショップを含め、「アートと遊ぶ」ワークショップ関係者たちのミラノやその他の町に触覚ワークショップが開催された。  最初のワークショップでの実験に限らず、いくつものワークショップから得られた経験から、いろいろな学校の既存設備の活用も広がった。  子どもたちは、床に広げられた大きな素材の表面に触れながら自分の身体をつかって触覚の体験をしたり、(彫刻家)スタッチョリ(のワークショップ)からつながる空間の感じ方を学ぶ。  スペースを狭く、とても狭く区切ったり、広く、とても広く区切る要素によっても遊びが生まれる。より小さな子どもには、いろいろな材料が広がったところから選んだものを列に並べながらそれぞれの違いを感じ取る(観察する)遊びを勧めることができる。  通常は体操などに用いる学校の設備(道具)をいつもとは異なるやりかたで一種の小屋のように組み合わせると、子どもたちがそこに出たり、入ったり、触ったり、何か(感じたこと)を語ったりできる仕掛けができた。  すべての試みは教師たちとの話し合いから生まれ、こうして教師たちの考えを取り入れることで彼らもワークショップのプロジェクトに何かを寄与することができる。 (写真説明)メッタ・ジスロンはアートで遊ぶワークショップの最初の協力者の一人。写真の場面では女の子に触り心地を試させている。

289.最初の触覚ワークショップ(i laboratori tattili-18)2019年04月07日 22:52

(ワークショップ写真説明) 子どもたちは自分たちの作った触覚のコンポジション(構成)を喜んで見せてくれる。あっという間に、ワークショップの空間はたくさんの触覚の構成パネル(作品)でいっぱいになった。

288.最初の触覚ワークショップ(i laboratori tattili-17)2019年03月26日 12:50

 このようなワークショップでは、保護者であれ係員であれ大人の手助けは情緒面(勇気づけ)と技術面なものであって、(美術的な)表現としてこうすべき、といった助言は絶対に慎まなければならない。  どうすれば不必要に汚れたりしないで糊付けができるか、より思い通りに素材を繋ぎ合わせられるかといった助言は有用である。しかし、こうすればこうなる、といった既成の知識を与えてはいけない。子どもはできる限り自立した存在になるべきである。  触覚的な世界に親しむことは、微細な違いを感じたり、視覚に頼らずよく似た性質のものを区別したり、有用な知識を得てコミュニケーションに役立ることから豊かな人間性発達の助けとなる。  このような、異なる方法による理解とコミュニケーションのやりかたを身につけることは(子どもの成長に)安心を与えてくれる。

287.最初の触覚ワークショップ(i laboratori tattili-翻訳16)2019年03月25日 22:37

 リップルボード(片面段ボール)は特別な触感のコミュニケーションが作れる素材なので、いろいろに切り取った素材を思いのままにパネルに貼り付けると、波うった表面に触れながら、途切れたり、止まったり、道から逸れたり、といった方向性のある触感を感じ取ることができる。

286.最初の触覚ワークショップ(i laboratoti tattili-翻訳15)2019年03月16日 20:57

 触感のメッセージを構成するためのすべての材料は、(子どもたちが)構成しややすいようにあらかじめ細かくカットされている。もしシンプルな感覚を(メッセージとして)与えたい場合は一つだけ、長い感覚を与えたいなら同じかけらを並べてみることができる。
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イタリアの芸術家+デザイナー+教育者、ブルーノ・ムナーリのことなどあれこれ。
こちらにもいろいろ紹介しています(重複有)https://fdl-italform.webnode.jp/

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