437.旅に出るSpazio Munari2025年03月09日 18:29

SpazioMunari
ミラノの中心からやや外れた、ポルタ・ジェノヴァ駅近くにあった「スパツィオ・ムナーリ」が閉店したそうです。
SNSによると「スパツィオ・ムナーリ」は今後ナポリ、ローマ、ボローニャなどに(テンポラリーに)出店するが、ミラノの実店舗は2025年2月末でクローズとのこと。
そもそもこのお店は15年前にマントヴァに本社がある出版社(とギャラリー)のコッライーニがミラノに進出して開いた三つのお店のうちの一つで、最後まで残ったお店(開店当初からときどき店を開けている、という感じでした)が、「スパツィオ・ムナーリ」と名前を変えてムナーリに関連したギャラリーショップとなったようでした。
「スパツィオ・ムナーリ」のウェブショップは継続するようなので、今後の動向を見守りたいと思います…。

433.ムナーリと禅(英文)2025年02月02日 13:31

ムナーリが東洋文化や東洋哲学に大きな感銘を受けていたことは、本人の残した文章や作品の中に明らかにされています。
前項で紹介したタンキスは論考の中でムナーリとパウル・クレーがいずれも禅の思想の影響を受けた芸術家であったと論じながら、唐代の禅僧の言葉を引用していましたし、アンドレア・ブランジも序文の中でムナーリに東洋哲学の精神をみていたようです。
イタリアではムナーリと東洋哲学の関係がどのように捉えられているかが気になり始めているのですが、そんな中、日本の生活用品などを扱うウェブストアにイタリア人によると思われる英文の「ムナーリと禅」(ムナーリと日本文化)を考察しているテキストを発見しました。

Nanban

ウェブショップの屋号?が「Nanban」というのが日本人からはいささか微妙ですが、取扱商品はどれもハイクオリティなもののようです。
上述のテキストではムナーリと日本の関わりについて、また柳宗理などとの交流についても詳しく触れられていて、かなり詳しくムナーリと日本の関係を知っている人によるものかと思いますが、「Azalea Seratoni」なる筆者についてはいまのところ何も分かっていません…

431.訃報2025年01月22日 22:51

2025年1月13日、ジュネーブにお住まいだった、ブルーノ・ムナーリ氏(同名のお孫さん)が享年53歳で逝去されたそうです。ミラノから届いた知らせによると、本日1月22日にご葬儀がジュネーブで執り行われるとのこと。

偉大な祖父と同じ名前をもったムナーリ氏は父アルベルト氏がジュネーブ大学の教授でしたので、ほぼスイスの人として生まれ育ち、病を得て亡くなったということのようです。
ムナーリ氏にはヴァレリアさんという姉妹がいて、この方が現在祖父ムナーリの相続者ということのようですね。

ご冥福をお祈りします。

423.レオ・レオーニとムナーリ2024年10月25日 21:16

「レオ・レオーニと仲間たち」展
2024年11月9日から2025年1月13日まで、板橋区立美術館では「レオ・レオーニと仲間たち」展が開催されます。

「レオ・レオーニと仲間たち」展

レオーニといえば『スイミー』や『フレデリック』などの絵本が日本でも世代を超えて愛されている人気の作家ですが、レオーニにはアーティストやデザイナーとしての輝かしいキャリアがあります。
レオーニはムナーリと同世代で、二十代の頃には後期イタリア未来派として同じ芸術グループの仲間でもありました。
その後はそれぞれデザイナーとしてイタリアとアメリカで活躍し、時には旧交を暖めていたようです。
421のコラムで紹介した「ムナーリのフォーク」とレオーニの関係などはその時代のエピソードですね。

今回の展覧会に合わせて、レオーニとムナーリの関係についてすこしだけお話させて頂く機会を頂きました。

レオ・レオーニと仲間たち展 関連イベント

422.作品集『BRUNO MUNARI』復刻2024年09月27日 16:50

『BRUNO MUNARI』(アルド・タンキス編)
今年はイタリアにおけるムナーリの「当たり年」のようで、3月からパルマで開催された過去最大規模の回顧展に続いて、1987年に出版されたムナーリの作品集『BRUNO MUNARI』(アルド・タンキス編)が復刻・再版されたとのニュースが届きました。
おそらく、大幅に旧版から改訂されて内容が充実していることでしょう。
出版社はコッライーニ社に変わったようです。

amazonイタリアでも航空運賃を追加すれば注文可能なようですが、おそらくコライーニ社のHPからでも注文できるのではないかと思います。
なおイタリアでは再販を記念した編者タンキスによる出版講演会が各地で開催されている由、そのうちにYouTubeなどに動画が上がることを期待するこの頃です…。

420.追悼 松岡正剛さん2024年08月21日 19:37

「編集工学」という新たな視点を世に発信しつづけた松岡正剛さんが2024年8月12日逝去されたそうです。享年80歳とのこと。
以下「時事通信」の8月21日記事を引用します。

「編集工学」を提唱して編集者、著述家として多方面で活躍し、独自の視点で日本文化を論じた松岡正剛(まつおか・せいごう)さんが12日午後1時53分、肺炎のため東京都の病院で死去した。80歳だった。京都市出身。

松岡さんは2009年に、ご自身のblog「千夜一冊」でムナーリの『モノからモノが生まれる』<をタイトルにしてムナーリについてくわしい記事を書かれていました。

千夜一冊1286夜『モノからモノが生まれる』

ご冥福をお祈りします。

419.ウェブマガジン「こここ」2024年07月17日 09:50

マガジンハウスのウェブマガジン「こここ」にムナーリと創造性についての記事が紹介されました(ご縁あって拙文も掲載されています)。

「創造性」って何だろう? ブルーノ・ムナーリを辿りながら──デザイナー、アーティスト、教育者の随想

ムナーリの創造性に関する思想と実践は21世紀の私たちにも新たな示唆を与えてくれるものがたくさんあります。
インクルーシブとクリエイティビティを中心に多彩な記事を発信しているウェブマガジン「こここ」の、その他の記事も大変興味深いものがいっぱいです。

417.瀧口修造のムナーリ訪問2024年07月03日 06:17

ムナーリと親交を結んだ日本人は数多いようですが、とても早い時期にミラノのムナーリを訪問した美術評論家で詩人の瀧口修造の記事が掲載された「美術手帳」(1959年6月号)を手に入れました。
瀧口のムナーリ評は、初対面ながらその特徴を的確に掴んだものだと思います。

瀧口修造 「JOY MAKER BRUNO MUNARI」
幻想空間を創る手品師 ムナーリ

「美術手帳」昭和34(1959)年6月号
Pp.61-71

「ムナーリはミラノに住む芸術家である。私は芸術家と書いたが、かれは画家であり、彫刻家であり、グラフィック・デザイナーであり、インダストリアル・デザイナーでもあって、そしてどれの枠にもはまらない存在だといってよいだろう。日本ではかれのいわゆる「読めない本」のひとつである「暗い夜に」nella notte buiaやデザインなどが雑誌「アイデア」で紹介されたことがあるので、むしろデザインの領域でよく知られている。事実ムナーリは一般にデザイナーだといった方が早わかりのようだが、多くの職業的デザイナーとはゆき方がちがっている。私は昨年のヨーロッパ旅行でデザイナーに会ったり、デザインを勉強するほどの余裕はほとんどなかったが、ミラノでオリヴェッティ会社の専属デザイナーであるピントーリを訪ねたことと、このムナーリの家を訪ねたくらいであった。すべての仕事がいつも新鮮なオリヴェッティ調を創りだすことに捧げられている、いわばすぐれた「現代的な職人」とでもいってよいピントーリにくらべると、ムナーリは自由をたのしんでいる詩人型とでもいえるだろう。かれの活動はいろんな面に分散していて、ちょっとつかみにくい。といって何でも屋の、ディレッタントというのとは別である。ムナーリの仕事にはかれ独特のファンタジーとユーモアがあり、時には底抜けのナンセンスを発揮する。かれのアイデアはたんに人の意表をつくというよりも、人にたのしさをあたえる人間的な暖かさがどの作品にもにじみ出ているのである。実際にその人に会ってしみじみ感じたことである。」

414.ムナーリの作品集について2024年05月11日 10:00

現在イタリア・パルマで過去最大規模のムナーリの回顧展が開催され、新しい作品集の発行も報じられていますが、驚くことにムナーリの作品集は毎年のように新しく編集され出版されているようです。
誰もが知っているような二十世紀の芸術家でも、これほど頻繁に作品集が出版されるケースが珍しいのでは?と思います。
察するに、ムナーリは芸術家としてもデザイナーとしても極めて多作な作家であったこと、そして活動の領域がアート、グラフィックデザイン、工業デザインから空間デザイン、さらに著作活動に教育活動と多岐にわたっているため、没後二十年以上たっても新しい作品が発掘され、また世界各地(もっとも多いのはイタリア国内ですが)で展覧会が開催されていることと関係がありそうです。

これまで入手できたもの、未入手ながら存在が確認できたムナーリの作品集について、以下に年代順に整理してみました;

海外(主にイタリア)作品集:
Universita’ di Parma編, (1979), Bruno Munari, CSAC
Marco Meneguzzo編,(1986), Bruno Munari, Electa

Aldo Tanchis編, (1987), Bruno Munari, Lund Humpton Publishers

Marco Meneguzzo編, (1993), Bruno Munari, Edizioni Laterza

Claude Lichtenstein編, (1995), Far vedere l’aria, Museum Fur Gestaltung Zurich

Beppe Finessi編, (1999), Bruno Munari, COSMIT

Alberto Fiz編, (2000), omaggio a Bruno Munari, Associazione Internazionale Amici di Reggio Children, Mazzotta

Claudio Cerritelli編, (2001), Bruno Munari prime idee, Libri Scheiwiller

Roberto Rizzi編, (2004), Collezione Bruno Munari, Galleria del Design e dell’Arredamento Cantu’

CSAC Universita’ di Parma編, (2008), Bruno Munari; Il Disegno, Il Design, Edizioni Corraini
Beppe Finessi, Marco Meneguzzo編, (2008), Bruno Munari, Silvana Editrice

Marco Romanelli編, (2008), Vietato l’ingresso agli addetti al lavoro, Edizioni Corraini
Claudio Cerritelli編, (2017), Artista totale Bruno Munari, Edizioni Corraini

Guido Bartorelli編, (2017), Bruno Munari aria terra, Edizioni Corraini

Michele Galluzzo編, (2019), Pre Design 1969, Edizioni Corraini

Miroslava Hajek Marcello Francolini編, (2019), Bruno Munari I COLORI DELLA LUCE, Gangemi Editore
Museo Tattile Statale Omero編, (2020), Toccare la bellezza Maria Montessori Bruno Munari, Edizioni Corraini
Palazzo delle esposizioni編, (2020), Tra Munari e Rodari, Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo編, (2022), Bruno Munari (FUNDACION JUAN MARCH SPAIN), Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo編, (2023), Bruno Munari el artista (MACA Urguay), Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo, Stefano Roffi編, (2024), Bruno Munari tutto, Dario Cimorelli Editore

特殊な作品集・資料:
Giorgio Maffei編, (2002), MUNARI I LIBRI, Edizioni Sylvestre Bonnard
Giorgio Maffei編, (2004), M.A.C. Movimento Arte Concreta Opera Editoriale, Edizioni Sylvestre Bonnard
Alberto Munari編, (2007), Nello studio con Munari, Edizioni Corraini

日本で発行された作品集:
瀧口修造文、(1965)、『ブルーノ・ムナーリ展』、伊勢丹

こどもの城造形事業部編、(1985)、『ブルーノ・ムナーリ展』
銀座・グラフィック・ギャラリー編、(1995)、『ブルーノ・ムナーリ 世界のグラフィックデザイン17』
小海町高原美術館、(2001)、『ブルーノ・ムナーリ展』

日本ブルーノ・ムナーリ協会編、(2006)、『ブルーノ・ムナーリのアートとあそぼう』
松岡希代子、高木佳子編、(2007)、『ブルーノ・ムナーリ あの手この手』、朝日新聞社

汐留イタリア・クリエイティ ブセンター編、(2007)、『ブルーノ・ムナーリ しごとに関係ある人出入りおことわり』
横須賀美術館編(2010)、『ブルーノ・ムナーリ展』

ジョルジョ・マッフェイ、(2010)、『ブルーノ・ムナーリの本たち』、BNN新社

ヴァンジ彫刻庭園美術館編、(2013)、『ブルーノ・ムナーリのファンタジア』
高嶋雄一郎他編、(2018)、 『ブルーノ・ムナーリ』、求龍堂

410.ムナーリ展のカタログ2024年04月08日 22:40

ムナーリ展の図録2024
イタリアのパルマ郊外で6月まで開催されている史上最大のムナーリ回顧展の図録、その名も『ブルーノ・ムナーリすべて(Bruno Munari Tutto)』がイタリアamazonに出ていました。

Bruno Munari Tutto

ムナーリの著作権管理をほぼ独占しているコライーニからの発行かと思いきや、今回のカタログは違う出版社のようです。
日本からでも送料を追加すれば購入可能なはずですが、なにしろ今は円安なので、様子を見ながらポチろうかと思案しています…
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こちらにもいろいろ紹介しています(重複有)https://fdl-italform.webnode.jp/

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