412.ムナーリ作品集の復刻2024年05月05日 05:07

イタリアではムナーリの研究者メネグッツォの監修による過去最大の回顧展が開かれているそうですが、これに合わせるように、ムナーリ研究者として名高いもう一人の人物アルド・タンキスによるムナーリの作品集がコライーニ社から復刻されたとのニュースが届きました。
タンキスの編んだ作品集もムナーリ生前の編集で本人に直接取材してまとめられた内容が含まれる貴重なものですが、復刻にあたあって更に改訂も加えられているとか。イタリア語版の他に英語版もあるようです。
定価が48ユーロ弱とのこと、1ユーロ165円の円安状態でも約7000円と比較的お手頃ですが、いまのところ日本のamazonでは取り扱いがないようです(あっても送料などが上乗せになると思いますが…)
コライーニ社ならウェブを通じて直接通販購入ができるかもしれません(英語の対応があると思います)。

413.「ミラノの町を語ろう」2024年05月07日 11:38

ムナーリのお弟子さんであるデツァーニさんが紹介してくれた、ボルトーニさんという方は、アメリカの子どもミュージアムでキャリアを積んで現在はミラノで子どものための文化活動の団体をたちあげられています。
innovActionCult
2024年5月7日、ボルトーニさんのSNSで「Racconti Straordinari di Citta':町の特別を語ろう」というイベント?の発表がありました。ミラノ市内の学校などに町を知る/探検するきっかけとなるデザイン冊子が配布されるそうです。
その中にはミラノ生まれの芸術家/デザイナーとして、ムナーリのことも紹介されているようです…
サイトは現時点でイタリア語オンリーのようで、リリース直後のせいか内容確認にちょっと時間がかかりますが、子どもたちに自分の暮らす町や地域について興味をもってもらう取り組みは、日本の地域教育ともつながるように思います。
Racconti Straordinari di Citta'

414.ムナーリの作品集について2024年05月11日 10:00

現在イタリア・パルマで過去最大規模のムナーリの回顧展が開催され、新しい作品集の発行も報じられていますが、驚くことにムナーリの作品集は毎年のように新しく編集され出版されているようです。
誰もが知っているような二十世紀の芸術家でも、これほど頻繁に作品集が出版されるケースが珍しいのでは?と思います。
察するに、ムナーリは芸術家としてもデザイナーとしても極めて多作な作家であったこと、そして活動の領域がアート、グラフィックデザイン、工業デザインから空間デザイン、さらに著作活動に教育活動と多岐にわたっているため、没後二十年以上たっても新しい作品が発掘され、また世界各地(もっとも多いのはイタリア国内ですが)で展覧会が開催されていることと関係がありそうです。

これまで入手できたもの、未入手ながら存在が確認できたムナーリの作品集について、以下に年代順に整理してみました;

海外(主にイタリア)作品集:
Universita’ di Parma編, (1979), Bruno Munari, CSAC
Marco Meneguzzo編,(1986), Bruno Munari, Electa

Aldo Tanchis編, (1987), Bruno Munari, Lund Humpton Publishers

Marco Meneguzzo編, (1993), Bruno Munari, Edizioni Laterza

Claude Lichtenstein編, (1995), Far vedere l’aria, Museum Fur Gestaltung Zurich

Beppe Finessi編, (1999), Bruno Munari, COSMIT

Alberto Fiz編, (2000), omaggio a Bruno Munari, Associazione Internazionale Amici di Reggio Children, Mazzotta

Claudio Cerritelli編, (2001), Bruno Munari prime idee, Libri Scheiwiller

Roberto Rizzi編, (2004), Collezione Bruno Munari, Galleria del Design e dell’Arredamento Cantu’

CSAC Universita’ di Parma編, (2008), Bruno Munari; Il Disegno, Il Design, Edizioni Corraini
Beppe Finessi, Marco Meneguzzo編, (2008), Bruno Munari, Silvana Editrice

Marco Romanelli編, (2008), Vietato l’ingresso agli addetti al lavoro, Edizioni Corraini
Claudio Cerritelli編, (2017), Artista totale Bruno Munari, Edizioni Corraini

Guido Bartorelli編, (2017), Bruno Munari aria terra, Edizioni Corraini

Michele Galluzzo編, (2019), Pre Design 1969, Edizioni Corraini

Miroslava Hajek Marcello Francolini編, (2019), Bruno Munari I COLORI DELLA LUCE, Gangemi Editore
Museo Tattile Statale Omero編, (2020), Toccare la bellezza Maria Montessori Bruno Munari, Edizioni Corraini
Palazzo delle esposizioni編, (2020), Tra Munari e Rodari, Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo編, (2022), Bruno Munari (FUNDACION JUAN MARCH SPAIN), Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo編, (2023), Bruno Munari el artista (MACA Urguay), Edizioni Corraini
Marco Meneguzzo, Stefano Roffi編, (2024), Bruno Munari tutto, Dario Cimorelli Editore

特殊な作品集・資料:
Giorgio Maffei編, (2002), MUNARI I LIBRI, Edizioni Sylvestre Bonnard
Giorgio Maffei編, (2004), M.A.C. Movimento Arte Concreta Opera Editoriale, Edizioni Sylvestre Bonnard
Alberto Munari編, (2007), Nello studio con Munari, Edizioni Corraini

日本で発行された作品集:
瀧口修造文、(1965)、『ブルーノ・ムナーリ展』、伊勢丹

こどもの城造形事業部編、(1985)、『ブルーノ・ムナーリ展』
銀座・グラフィック・ギャラリー編、(1995)、『ブルーノ・ムナーリ 世界のグラフィックデザイン17』
小海町高原美術館、(2001)、『ブルーノ・ムナーリ展』

日本ブルーノ・ムナーリ協会編、(2006)、『ブルーノ・ムナーリのアートとあそぼう』
松岡希代子、高木佳子編、(2007)、『ブルーノ・ムナーリ あの手この手』、朝日新聞社

汐留イタリア・クリエイティ ブセンター編、(2007)、『ブルーノ・ムナーリ しごとに関係ある人出入りおことわり』
横須賀美術館編(2010)、『ブルーノ・ムナーリ展』

ジョルジョ・マッフェイ、(2010)、『ブルーノ・ムナーリの本たち』、BNN新社

ヴァンジ彫刻庭園美術館編、(2013)、『ブルーノ・ムナーリのファンタジア』
高嶋雄一郎他編、(2018)、 『ブルーノ・ムナーリ』、求龍堂

415.子どものおもちゃのデザイン2024年05月16日 13:24

1979年パルマ大学が企画したムナーリの大規模回顧展に関連して、美術史家のアルトゥーロ・カルロ・クインタヴァッレ(パルマ大学教授)がムナーリにインタビューした記事を発見しました。
INTERVISTA A MUNARI di Arturo Carlo Quintavalle
クインタヴァッレ教授の質問は、ムナーリの芸術活動からデザインまで広く詳細なポイントをついた内容で興味深いのですが、その中から「子どものおもちゃのデザインにとって大切なことは?」という問いとムナーリの答えを紹介してみます。

クインタヴァッレ教授の質問
Qual'è secondo lei il modo corretto per affrontare il problema della progettazione del giocattolo in relazione agli schizzi del 1952 per il gatto flessibile?
1952年の柔軟なネコのポーズのドローイング(※後に発泡ゴム製の玩具「ガット・メオ・ロメオ」として具体化された)に関連して、玩具デザインの課題にアプローチするための正しい方法は何だと思いますか?

ムナーリの返答:

Il modo più corretto di affrontare il problema della progettazione di un giocattolo, è quello di immedesimarsi nella natura infantile. Considerare ciò che un bambino può aspettarsi da un giocattolo. E siccome il bambino è di fronte al mondo in modo globale, non si può progettare un giocattolo solo bello da vedere, senza preoccuparsi che sia anche piacevole da toccare, che abbia un giusto peso, che sia modificabile, trasformabile, smontabile, componibile. E poi che il materiale usato non sia tossico, che non ci siano troppi spigoli o punte, che costi il meno possibile. Meglio ancora è insegnare ai bambini a costruirsi i giocattoli.
玩具をデザインする課題に取り組む正しい方法は、子どもの性質に共感することです。子どもはおもちゃに何を期待するのかを考えることです。そして子どもは多様(グローバル)な方法で世界と向き合っているのですから、視覚的に美しいだけの玩具をデザインすることはできません。そして使用されている素材が無害であること、角や尖った部分が多すぎないこと、できるだけ製造コストがかからないことです。もっとも良いのは、子どもたちに自分でおもちゃを作ることを教えることでしょう。
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こちらにもいろいろ紹介しています(重複有)https://fdl-italform.webnode.jp/

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