122. 「たんじょうびのおくりもの」(ムナーリの絵本) ― 2006年01月01日 17:14

モンダドーリ社から1945年にムナーリが出した仕掛け絵本のひとつです。子供の誕生日のプレゼントを抱えて家に向かうトラックの運転手がさまざまなアクシデントをのりこえて家にたどりつくまでのお話。現在コッライーニ社が復刻したものが日本でも手に入ります(テキストは英語版とイタリア語版)。
123. 絵本/フトン? ― 2006年01月02日 16:03

ムナーリの絵本作りの発想は、いわゆる二次元の本を作る感覚とは全く異なるところから始まっていると思います。ムナーリの本(絵本)を数多く復刻・出版しているコッライーニ社のマルツィアさんも「ムナーリは印刷物としての本をデザインしていると言うより、伝えるべき内容に合わせた素材を選んで絵本を作った」ということを言っていましたが、ご紹介している「本/フトン」(libro letto)もまさにアイディアが素材を選んだ好例だと思います。これは「絵本」(縁の部分にテキストが印刷されています)ですが、きれいな色地の布でくるまれたクッションのようなもので、広げたり畳んだり組み立てたり、本として「読む」以外にも「立体おもちゃ」として遊べるようになっています。「libro letto」(イタリア語)は直訳すると「本/フトン」ですが、「読んだ本」という掛詞にもなっているようです。
124. ムナーリの10冊の絵本 ― 2006年01月03日 17:14

これまでにもそのうちのいくつかをご紹介してきましたが、1945年にムナーリが息子のために、と考えて作った仕掛け絵本は10種類、そのうちの7冊までが当時モンダドーリ社から発行されました。発行されなかった3冊のうち2冊を含めて現在コッライーニ社が9冊の絵本を復刻していますが、最後の一冊については分かりません。あと一冊はどうなったのでしょうか?
125. ムナーリの彫刻 ― 2006年01月04日 17:17

ムナーリが作った彫刻(大型の)がイタリア国内のあちこちに設置されているそうです。ご紹介しているのはナポリに設置された「Cesenatico」と呼ばれる作品。基本的に金属の板状素材を使った「旅の彫刻」に似たフォルムの作品のようです。いちど現地を訪ねてみたい気がします。
126. Ora X(時計) ― 2006年01月05日 17:31

1945年から1963年にかけてダネーゼ社で生産していたムナーリの時計「Ora X」です。時針に色の付いた透明な半円のパネルが付いていることで、折々の時間ごとに短針と長針のパネルの色の重なり合いが変化します。この時計をムナーリは「multiplo」(マルティプル)という、アート作品の複製化と考えていたようです。
127. デザインのファンタジスタ(メンディーニ、ムナーリを語る) ― 2006年01月06日 15:39

1980年代〜90年代のイタリアのモダンデザインに興味のある人ならご存じだと思いますが、アレッサンドロ・メンディーニという人がいます。「アルキミア」「メンフィス」といった80年代に世界中の注目を集めたポストモダンデザインの理論的なリーダーの一人ですが、ムナーリについて面白いことを言っていました。「ブルーノ・ムナーリは、彼の灰皿(ダネーゼ)を見れば分かるとおり最高に創造的な素材のあつかいを知っている、言ってみればデザインのファンタジスタだ。が、ムナーリが何者なのか語るのはなかなか難しい。逆にムナーリは何でないのか、考えてみよう。デザイナーでなく、画家でなく、グラフィックデザイナーでなく、ポスターデザイナーでなく、装飾家でなく、ファッションデザイナーでなく、エッセイストでなく、教師でなく、彫刻家でなく、写真家でなく、映画監督でなく、詩人でなく、学者でなく、こどもでなく、大人でなく、老人でなく、若者でもない。...」 Bruno Munari ovvero l'apolide fantasista del design, il triplo concentrato di materia cerebrale creativa, il posacenere-capolavoro. Ma è difficile dire che cosa è Munari. Meglio aggirare l'ostacolo e dire cosa egli "non è". Munari, allora, non è un designer, non un pittore, non un grafico, non un cartellonista, non un vetrinista, non uno stilista, non un saggista, non un insegnante, non uno scultore, non un fotografo, non un regista, non un poeta, non un semiologo, non un bambino, non un adulto, non un vecchio, non un giovane. ...
128. プラス・マイナス(絵本) ― 2006年01月07日 22:09

ムナーリの作った絵本には製本されていない、読む人が自由に順番を入れ替えて楽しめるものがいくつかありますが、この「プラス・マイナス」もそのひとつです。透明(または半透明)のフィルムシートにいろいろなものが印刷されていて、何枚ものシートを重ね合わせることでいろいろなシーンを自分で作りながらお話を作れる?(テキストはありません)絵本です。1970年にダネーゼ社から発売され、現在は絶版のようです(昨年日本のショップでデッドストック品が発売されたそうですが、あっという間に売れてしまったとか)。
129. 不整脈な機械 ― 2006年01月08日 22:21

ムナーリが1950年代から80年代に書けて断続的に作ったぜんまい仕掛けのオブジェです。ゼンマイモーターと鋼線の結合による、ぎくしゃくとした動きのオブジェになっていますが、これもまた一種の「役に立たない機械」といえるのでしょうか。
130. ムナーリと武満徹 ― 2006年01月09日 18:34

先日ブルーノ・ムナーリのインタビュー映像を見たとき、ムナーリ自身が「自分のワークショップで音楽をかけるとしたら?友人のタケミツの曲をかけたい...」と言っているのを聞いて、「きっと瀧口修造を通じて知り合ったのだろう」と思っていたのですが、ちょっと調べてみたところ、武満の作品に「munari by munari」という打楽器曲がありました。ムナーリからプレゼントされた「読めない本」に想を得て書かれた曲とのこと。「作曲:1971年(72年改訂)、編成:perc(s)(演奏時間:不確定)、初演:1971年10月28日 パリ「現代音楽の日々・武満徹の音楽」、初演者:ツトム・ヤマシタ、ジェラール・フレミイ(pf)」「楽譜は一辺が23センチメートル余りのほぼ正方形の薄い本で、赤茶白黒の形も大きさも異なる紙片が綴じ込まれている。赤と茶の紙には曲線的な切り抜きがあり、赤は「速く」、茶は「遅く」を意味する。白い紙には“Rubinstrument”“Breathe the bells as wind”といった謎めいた言葉が、また黒い紙には五線に音が書かれている。」とあります。ちなみにCDはポリドールから(POCG-3656)出ているようです。
131. ムナーリと瀧口修造の出会い ― 2006年01月10日 09:57

日本にはじめてムナーリを紹介した瀧口修造と、ムナーリとの出会いは1958年にさかのぼるそうです。このとき、現代美術の世界的に重要なイベントであるベネチア・ビエンナーレに日本代表兼審査員として参加した瀧口はアンドレ・ブルトンやブルーノ・ムナーリと親交を深めました。戦前から活動していた洋画家(シュルレアリスト)の福沢一郎、当時新進の評論家だった東野芳明らも同行の旅だったようです。瀧口はイタリアを皮切りに4ヶ月半を費やしてヨーロッパ各地を旅行し、ミラノではムナーリからエンツォ・マリ(当時出たてのデザイナーだった)について(おそらくダネーゼの話も出たことでしょう)聞いたと本人の日誌に記されていました。
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