380.現代イタリアにみるムナーリとモンテッソーリの関係2023年04月30日 21:25

「役にたたない機械」
インターネットでムナーリの教育について情報集めをする中で、モンテッソーリ教育に関するトピックとして「ムナーリのモビール」がモンテッソーリ教具として使われている、という記事を発見しました。
このような記事は日本で出版されているモンテッソーリ教育に関する書籍・雑誌でも見ることができます。

しかし、マリア・モンテッソーリとムナーリは同じ二十世紀を生きたイタリア人とはいっても、ムナーリが活動を始めた頃にはモンテッソーリはイタリアを離れていたことがわかっています。
モンテッソーリがムナーリの作ったオブジェを自身の教具として採用したとは考えられないため、この件についてムナーリのお弟子さんに直接質問をしたところ、「そんな話はまったく聞いたことがない。それは、公式に認められたものではないだろう」という驚きの回答が返ってきました。

そもそも「ムナーリのモビール」という呼び方ですが、ムナーリの作品「役にたたない機械」は「モビールではない」ということをムナーリ自身が『芸術としてのデザイン』序章で明言しています。
いろいろ調べたところ、現時点の理解では、ムナーリの教育について学んだ(おそらくイタリアの)保育者のだれかが、ムナーリの著書の中に紹介されている「役に立たない機械」をレプリカとして作ってモンテッソーリ・スクールで乳幼児のおもちゃに利用したものが、いつの間にか「モンテッソーリ教具としてのムナーリのモビール」という誤解を広めたのではないか…ということでした。

この「謎解き」のようなエピソードは、2023年春に美術教育関係の学会誌に論文として発表することができました。

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